GASとは？初心者でもできる業務自動化の基本と活用例

「毎日同じ作業の繰り返しで時間がもったいない…」「顧客データの整理に時間がかかりすぎる…」「もっと効率的に業務を進める方法はないだろうか…」

このような悩みを抱えている中小企業や個人事業主の方は多いのではないでしょうか。実は、Googleが提供する無料ツール「Google Apps Script（GAS）」を使えば、こうした日々の業務を驚くほど簡単に自動化できるのです。プログラミング初心者でも、コピペだけで使えるサンプルコードもご紹介します。

今回は、GASを使って業務効率化を実現する方法を、具体的な活用例とともにわかりやすく解説します。まずは簡単な作業からでも毎日の同じ作業を自動化してみましょう！

GASとは？
実際にGASを使ってみよう（初心者向け）
その他のGASを使った業務効率化例
GASを活用して業務をもっと効率化しよう！

GASとは？

Google Apps Script（GAS）は、Googleが提供する強力な業務自動化ツールです。中小企業や個人事業主の方にとって、特に魅力的な選択肢となります。

GAS（Google Apps Script）の概要とは？

Google Apps Script（GAS）は、Googleのサービスを自動化・拡張するためのJavaScriptベースのスクリプト言語です。Googleスプレッドシート、Gmail、Googleフォーム、Googleカレンダーなど、Googleの各種サービスを連携させて自動化できます。

例えば、毎日手動で行っているデータ集計や、定型文を使った返信メールの送信、カレンダーへの予定登録といった作業を、GASを使って自動化することが可能です。JavaScriptの知識があれば理解しやすいですが、プログラミング初心者でも基本的な文法さえ押さえれば、コピペで活用できるサンプルコードも多く公開されています。

なぜGASが便利なのか？無料で使える業務自動化ツール

GASの最大の魅力は、無料で利用できることです。他の業務自動化ツールは月額料金がかかるものが多いですが、GASはGoogleアカウントさえあれば誰でも無料で使用できます。また以下の点でとても便利です：

クラウドベース: インストールや設定が不要で、ブラウザ上ですぐに始められます
自動実行: 時間指定やトリガーを設定すれば、定期的に処理を実行させることが可能です
APIとの連携: 外部サービスとの連携も可能で、様々なデータソースを活用できます
共同編集: チームでスクリプトを共有・編集できるため、ノウハウの蓄積がしやすいです

特に時間による自動実行機能は、「毎日午前9時にデータを集計」「週に一度、顧客にフォローメールを送信」といった定型業務の自動化に最適です。

中小企業・個人事業主に適した理由（簡単・低コスト・Googleサービス連携）

中小企業や個人事業主がGASを活用すべき理由は主に3つあります：

1. 導入コストが低い 専門的なITスキルがなくても始められるため、外部に開発を依頼する必要がありません。また、サーバー費用や月額料金も不要です。

2. すでに使っているGoogleサービスと連携できる 多くの企業や個人事業主がすでに使用しているGoogleのサービス（Gmail、カレンダー、スプレッドシートなど）とシームレスに連携できます。新しいシステムを導入する必要がないため、学習コストも低く抑えられます。

3. 段階的に自動化を進められる 最初は簡単な自動化から始めて、徐々に複雑な処理を追加していくことができます。例えば、まずはGmailの自動返信から始めて、次にスプレッドシートとの連携、そしてカレンダーへの予定自動登録と、段階的に自動化の範囲を広げていけます。

実際に、個人事業主や中小企業、拠点をまたぐプロジェクトなどでは、GASを活用して業務効率を大幅に向上させている例が数多くあります。

実際にGASを使ってみよう（初心者向け）

それではGASを実際に使ってみましょう。プログラミングが初めての方でも理解できるよう、基本的な使い方から解説します。

GASの基本的な書き方と使い方

GASはJavaScriptをベースにしていますが、難しく考える必要はありません。まずは基本的な操作から始めましょう。

Google Apps Scriptエディタの開き方

Googleスプレッドシートを開く（新規作成でも既存のものでもOK）
上部メニューの「拡張機能」→「Apps Script」をクリック
Google Apps Scriptのエディタが新しいタブで開きます

これだけで、GASを書き始める準備が整います。エディタが開いたら、デフォルトで表示されるコードを削除して、新しくコードを書いていきます。

初めてのスクリプトを書く（スプレッドシートにデータを書き込む）

最も基本的な例として、スプレッドシートにデータを書き込むスクリプトを作成してみましょう。

function myFirstScript() {
  // アクティブなスプレッドシートを取得
  var sheet = SpreadsheetApp.getActiveSpreadsheet().getActiveSheet();
  
  // A1セルに「Hello, World!」と書き込む
  sheet.getRange("A1").setValue("Hello, World!");
  
  // A2セルに現在の日時を書き込む
  sheet.getRange("A2").setValue(new Date());
}

このコードは以下のことを行います：

現在開いているスプレッドシートのアクティブなシートを取得
A1セルに「Hello, World!」というテキストを書き込む
A2セルに現在の日時を書き込む

スクリプトを実行する方法

スクリプトを実行するには：

エディタ上部の実行ボタン（再生ボタンのようなアイコン）をクリック
初回実行時は権限の確認が表示されるので「許可」をクリック
スプレッドシートに戻ると、指定したセルにデータが書き込まれています

初回実行時には「このアプリは確認されていません」という警告が表示されますが、これはあなた自身が作成したスクリプトなので、「詳細」→「〇〇（危険性を承知で）に移動」を選択し、「許可」をクリックして進めてください。

サンプルコード① Gmailで自動返信を設定する

次に、実用的な例として、特定の件名のメールが届いたときに自動返信するスクリプトを紹介します。

function autoReplyToEmails() {
  // 未読メールを検索（最大10件）
  var threads = GmailApp.search('is:unread', 0, 10);
  
  for (var i = 0; i < threads.length; i++) {
    var messages = threads[i].getMessages();
    
    for (var j = 0; j < messages.length; j++) {
      var message = messages[j];
      
      // メールが未読かどうか確認
      if (message.isUnread()) {
        var subject = message.getSubject();
        var sender = message.getFrom();
        
        // 「お問い合わせ」という件名のメールに対してのみ自動返信
        if (subject.indexOf('お問い合わせ') !== -1) {
          // 返信を送信
          message.reply(
            'お問い合わせありがとうございます。\n\n'
            + '2営業日以内にご返信いたしますので、今しばらくお待ちください。\n\n'
            + '株式会社〇〇\n'
            + 'カスタマーサポートチーム'
          );
          
          // メールを既読にする
          message.markRead();
          
          // ログを残す
          Logger.log('自動返信を送信しました: ' + sender);
        }
      }
    }
  }
}

このスクリプトを定期的に実行するには、トリガーを設定します：

エディタの左側メニューで「トリガー」アイコン（時計マーク）をクリック
「トリガーを追加」ボタンをクリック
実行する関数を「autoReplyToEmails」に設定
イベントのソースを「時間主導型」に設定
時間ベースのトリガーを「分ベースのタイマー」に設定し、「5分おき」などを選択
「保存」をクリック

これで5分ごとに新着メールをチェックし、「お問い合わせ」という件名のメールがあれば自動返信するようになります。

サンプルコード② スプレッドシートのデータを自動更新する

もう一つの実用例として、スプレッドシートのデータを毎日自動的に更新するスクリプトを紹介します。例えば、日付ごとの売上データを集計するケースを考えてみましょう。

function updateDailySales() {
  // スプレッドシートを取得
  var sheet = SpreadsheetApp.getActiveSpreadsheet().getSheetByName("売上データ");
  var summarySheet = SpreadsheetApp.getActiveSpreadsheet().getSheetByName("日次集計");
  
  // 今日の日付を取得
  var today = new Date();
  var dateString = Utilities.formatDate(today, 'JST', 'yyyy/MM/dd');
  
  // 売上データから今日の売上を集計
  var dataRange = sheet.getDataRange();
  var values = dataRange.getValues();
  var todaySales = 0;
  
  // ヘッダー行をスキップするため、i=1から開始
  for (var i = 1; i < values.length; i++) {
    var rowDate = values[i][0]; // 日付は1列目（0番目）にあると仮定
    
    if (rowDate instanceof Date) {
      var rowDateString = Utilities.formatDate(rowDate, 'JST', 'yyyy/MM/dd');
      
      if (rowDateString === dateString) {
        // 金額は3列目（2番目）にあると仮定
        todaySales += values[i][2];
      }
    }
  }
  
  // 集計シートに今日の日付と売上を追加
  var lastRow = summarySheet.getLastRow() + 1;
  summarySheet.getRange(lastRow, 1).setValue(today);
  summarySheet.getRange(lastRow, 2).setValue(todaySales);
  
  // 簡易的なレポートをメールで送信
  var recipient = "your.email@example.com"; // 送信先メールアドレス
  var subject = dateString + " 売上集計";
  var body = dateString + "の売上合計は " + todaySales + " 円でした。\n\n詳細はスプレッドシートをご確認ください。";
  
  GmailApp.sendEmail(recipient, subject, body);
}

このスクリプトも、トリガーを設定して毎日自動実行するようにしましょう：

トリガー設定画面を開く
「トリガーを追加」ボタンをクリック
実行する関数を「updateDailySales」に設定
イベントのソースを「時間主導型」に設定
時間ベースのトリガーを「日付ベースのタイマー」に設定し、「午前1時〜2時」などを選択
「保存」をクリック

これで毎日決まった時間に売上データが集計され、指定したメールアドレスにレポートが送られるようになります。日々の売上を追跡するのに便利な機能です。

その他のGASを使った業務効率化例

ここからは、さらに具体的なGASの活用例を紹介します。あなたの業務に合わせてカスタマイズしてみてください。

Googleスプレッドシートを使ったデータ処理の自動化

スプレッドシートは多くの企業で日常的に使われていますが、GASを使えばさらに強力なツールになります。

例えば、複数のシートからデータを統合して分析したり、定期的なバックアップを作成したりできます。以下は、スプレッドシートの特定の列のデータを集計し、グラフ用のデータを別シートに自動作成するスクリプトの例です：

function aggregateData() {
  var ss = SpreadsheetApp.getActiveSpreadsheet();
  var sourceSheet = ss.getSheetByName("データ");
  var targetSheet = ss.getSheetByName("集計");
  
  // 既存の集計データをクリア
  targetSheet.clear();
  
  // ヘッダーを設定
  targetSheet.getRange("A1").setValue("カテゴリ");
  targetSheet.getRange("B1").setValue("合計金額");
  
  // 元データを取得
  var data = sourceSheet.getDataRange().getValues();
  var categories = {};
  
  // カテゴリごとに集計（カテゴリは2列目、金額は3列目にあると仮定）
  for (var i = 1; i < data.length; i++) {
    var category = data[i][1];
    var amount = data[i][2];
    
    if (categories[category]) {
      categories[category] += amount;
    } else {
      categories[category] = amount;
    }
  }
  
  // 集計結果を書き込み
  var row = 2;
  for (var category in categories) {
    targetSheet.getRange(row, 1).setValue(category);
    targetSheet.getRange(row, 2).setValue(categories[category]);
    row++;
  }
  
  // グラフを作成
  var chartRange = targetSheet.getRange("A1:B" + (row - 1));
  var chart = targetSheet.newChart()
    .setChartType(Charts.ChartType.PIE)
    .addRange(chartRange)
    .setPosition(5, 5, 0, 0)
    .build();
  
  targetSheet.insertChart(chart);
}

このスクリプトを実行すると、「データ」シートのカテゴリ別に金額を集計し、「集計」シートに結果とグラフを自動作成します。例えば、商品カテゴリ別の売上を視覚化するのに役立ちます。

Googleフォームと連携したアンケート結果の整理

Googleフォームは顧客アンケートや問い合わせフォームとして便利ですが、GASを使えば回答が届いたときに自動で通知を送ったり、回答を分析したりできます。

function onFormSubmit(e) {
  // フォーム送信イベントから回答を取得
  var responses = e.response.getItemResponses();
  var name = "";
  var email = "";
  var inquiry = "";
  
  // 各質問の回答を取得（質問の順序に応じて調整が必要）
  for (var i = 0; i < responses.length; i++) {
    var question = responses[i].getItem().getTitle();
    var answer = responses[i].getResponse();
    
    if (question == "お名前") {
      name = answer;
    } else if (question == "メールアドレス") {
      email = answer;
    } else if (question == "お問い合わせ内容") {
      inquiry = answer;
    }
  }
  
  // 担当者にメールで通知
  var subject = "新規お問い合わせ: " + name + "様";
  var body = "以下の内容でお問い合わせがありました。\n\n"
           + "■お名前: " + name + "\n"
           + "■メールアドレス: " + email + "\n"
           + "■お問い合わせ内容:\n" + inquiry;
  
  GmailApp.sendEmail("staff@example.com", subject, body);
  
  // 問い合わせ内容によって自動振り分け（例：特定のキーワードを含む場合）
  if (inquiry.indexOf("返品") !== -1 || inquiry.indexOf("交換") !== -1) {
    // 返品・交換関連の問い合わせを担当者に転送
    GmailApp.sendEmail("returns@example.com", "【至急】返品関連のお問い合わせ", body);
  } else if (inquiry.indexOf("見積") !== -1) {
    // 見積関連の問い合わせを営業担当に転送
    GmailApp.sendEmail("sales@example.com", "【見積依頼】新規お問い合わせ", body);
  }
}

このスクリプトを使うには、フォームの回答が記録されるスプレッドシートで、以下の手順でトリガーを設定します：

スプレッドシートでApps Scriptエディタを開く
上記のスクリプトを貼り付ける
トリガー設定画面で「トリガーを追加」をクリック
実行する関数を「onFormSubmit」に設定
イベントのソースを「スプレッドシートから」に設定
イベントの種類を「フォーム送信時」に設定
「保存」をクリック

これで、フォームが送信されるたびに自動で通知メールが送られ、問い合わせ内容によって適切な担当者に振り分けられるようになります。顧客対応の迅速化に役立ちます。

日々の業務を効率化するリマインダー機能

GASとGoogleカレンダーを連携させれば、自動リマインダーシステムも構築できます。例えば、顧客フォローや定期メンテナンスのリマインダーを自動送信する仕組みです。

function sendReminderEmails() {
  // 明日の予定を取得
  var tomorrow = new Date();
  tomorrow.setDate(tomorrow.getDate() + 1);
  var tomorrowStart = new Date(tomorrow.setHours(0, 0, 0, 0));
  var tomorrowEnd = new Date(tomorrow.setHours(23, 59, 59, 999));
  
  // カレンダーから予定を取得
  var calendar = CalendarApp.getDefaultCalendar();
  var events = calendar.getEvents(tomorrowStart, tomorrowEnd);
  
  // 予定ごとにリマインダーメールを送信
  for (var i = 0; i < events.length; i++) {
    var event = events[i];
    var title = event.getTitle();
    var startTime = event.getStartTime();
    var formattedTime = Utilities.formatDate(startTime, 'JST', 'yyyy/MM/dd HH:mm');
    
    // 「顧客ミーティング:」で始まる予定の場合、関係者にリマインダーを送信
    if (title.indexOf("顧客ミーティング:") === 0) {
      var customerName = title.replace("顧客ミーティング:", "").trim();
      var description = event.getDescription();
      var location = event.getLocation();
      
      // ミーティング参加者にメールを送信
      var attendees = event.getGuestList().map(function(guest) {
        return guest.getEmail();
      });
      
      // メール本文を作成
      var subject = "【リマインダー】明日 " + customerName + "様とのミーティング";
      var body = "明日 " + formattedTime + "から " + customerName + "様とのミーティングが予定されています。\n\n"
               + "■場所: " + location + "\n"
               + "■内容: " + description + "\n\n"
               + "事前準備をお願いします。";
      
      // メール送信
      GmailApp.sendEmail(attendees.join(","), subject, body);
    }
  }
}

このスクリプトを毎日実行するトリガーを設定すれば、翌日の顧客ミーティングの予定がある場合に自動でリマインダーメールを送信します。フリーランスや中小企業の営業担当者にとって、重要な予定の見落としを防ぐ役立つ機能です。